小倉涌は、2010年に東京で開催した個展「マッカーサーの子供たち」で注目を集めました。 作品は、先の戦争で敗北してから65年が経過した2010年代に入った今日、若い世代のみならず、日本人全体が忘却のかなたに追いやっている敗戦前後のありさまを、「当時の生きたアイコンであった天皇とマッカーサーの少年化」、あるいは「戦死した日米の兵士たちの生 前写真で飾られた、降伏調印の場所であった米戦艦ミズーリ」など特異なイメージをリアリズムの手法で再現するものでした。 長引く不況で、時代はすでに暗い雰囲気に包まれつつあったものの、けだるい平和が続く日常の中で、小倉の作品は、歴史は早々と忘却されていくものであること、しかし私たちの日常はまぎれもなく歴史の上に立ったものであることを反省させる、一条の光のように鮮明な印象を与えるものでした。 小倉自身が発言しているように、これらの作品は現代美術ではジャンルとしてほ