人類の三大発明は「神」「言葉」「貨幣」である。 三つはとてもよく似ている。 神も言葉も貨幣も作用しているだけなのだ。 だから、貨幣は経済の手段なのではなく、 経済が貨幣を前提にしたのである。 貨幣は人々の思いを吸いこみ、 社会が寄ってたかって祭り上げた集合象徴なのだ。 本書はそのことを「経而上学」をもって告げる。 久々に読んで、その貨幣観に遊ばせてもらったが、 とはいえそれで、なんとも面妖な「マネーの力」が うまく説明つくわけではない。 ほんとに貨幣って、めんどくさい。 わが家は父が呉服屋(悉皆屋)を営んでいた。折からの糸ヘン不況のあおりを食って、二度にわたる不渡り手形に引っ掛かった。一度目は倒産したのち松岡商店としてちっぽけに復活し、二度目は新たな借財がほとんど返せないうちに父が横浜元町に出店すると言い出してまたまた失敗、それからまもなく父は借金を残して死んだ。母にせがまれてぼくがその借