野田佳彦首相が税・社会保障の一体改革を急ぐのは、少子高齢化の進展に伴い、膨らむ一方の社会保障費をまかなう財源の確保が難しくなっているためだ。欧州債務危機で財政規律に対する市場の視線が厳しくなる中、先進国で最悪の財政状況を放置すれば、長期金利の上昇などを通じて結果的に日本経済を冷えこませかねない。一方、拙速な増税は景気を下押しするため、政府・与党は慎重な政策運営を求められる。 ■膨らむ社会保障 「団塊世代が支える側から支えられる側になりはじめ、社会保障費は(毎年の)自然増で1兆円を超える。際限なく先送りできるテーマではない」。野田首相は5日の政府・与党社会保障改革本部でこう強調し、一体改革の必要性を訴えた。 東日本大震災の復興費用などがかさみ、11年度末の借金(短期借入金を含む)は1000兆円を突破する見通し。国の一般歳出の5割強は社会保障費が占め、財政健全化には社会保障の効率化が急務だ。一