いまなお、原発再稼働には6割近くの人々が反対している。本書は、柏崎刈羽原発の再稼働が争点となった昨年10月の新潟知事選で、なぜ当初は圧勝が予想された与党候補を破り米山隆一氏が当選できたのか、その背景を浮かび上がらせた大変興味深い一冊だ。 端的に言えば勝因は、県民に高く評価されていた泉田裕彦・前知事の継承を掲げたこと、そして「県民の安全確保が徹底されない限り、再稼働を認めない」と訴えた米山氏の主張の明快さにあった。この点で、再稼働支持の連合の支援を受けなかったことは、訴えの明確化という点でかえって幸いしたという。 選挙戦では改めて、避難計画の不備が明らかになった。フクシマ後のいまも、住民の安全確保が後回しとなるのは驚きである。東京電力の再生には、柏崎刈羽原発の再稼働が不可欠とよく言われるが、東電の利潤と県民の命と、どちらが大事なのか。新潟県民は、明快な判断を下した。