パナソニックが結果を出せない。津賀一宏の社長就任から1年。V字回復を果たすどころか、2年連続の巨額赤字にあえぐ。津賀は、いたるところで改革を阻む壁にぶちあたっていた。「次は韓国で」パナソニックの本社などが集まる大阪府門真市の通称、「本社地区」。5月31日朝、大型バスが乗りつけた。30人の訪問客はバスを降りると、ぞろぞろとパナソニックのビルへと入っていった。彼らが通された部屋には、所狭しと電子部品が並んでいた。パナソニックの幹部や社員も顔をそろえている。午前10時。会議が始まると、訪問客の集団から矢継ぎ早に質問が飛んだ。「このセンサーの性能は?」「こちらのICタグのメリットは?」……。2時間ほどの会合の間、和やかなムードの中にも緊張した空気が漂い続けていた。無理もない。30人の訪問客は、韓国サムスン電子のエンジニアたちだったからだ。この日の会合は、パナソニック社内で「技術交流会」と呼ばれる特