1階部分が完全につぶれた工場の前で、取り出した漆器や道具を手にする田谷昂大さん(右)と土居和佳奈さん=輪島市杉平町で 新型コロナウイルス禍を乗り越え、さあこれからという矢先の大地震だった。輪島市杉平町の老舗輪島塗メーカー、田谷(たや)漆器店は工場や事務所棟が倒壊。今月末のオープンに向け、建設中だった新ギャラリーは焼失した。一時は絶望したが、全国から寄せられる多くのエールを受け、「絶対にあきらめない。乗り越えて、さらに強い輪島塗にしたい」と再起を誓う。 「あ、へらだ」。5日午後、1階部分が完全につぶれた工場で、職人の土居和佳奈さん(22)が、がれきのすき間から漆塗りの道具を見つけて声を上げた。「おわんもある」。専務で10代目の田谷昂大(たかひろ)さん(32)は工場の被災状況を確認しながら、「僕より再起の意志が強いな」と目を細めた。