デイヴィッド・グラン(近藤隆文 訳) 2010年6月25日刊 日本放送出版協会 ¥2200+税 1925年、幻の文明都市「Z」を探すためにアマゾンの奥地をめざし、消息を絶った英国人探検家パーシー・ハリソン・フォーセットの足跡をたどるノンフィクション。 この手の話は、書き手の主観的推測だらけの怪しげなものになるか、さもなければ、事実の羅列ばかりの退屈なものになることが多いが、本書はそのいずれにもあたらない。著者は、事実の解釈につきもののゆがみやねじれを最小限に抑える努力を怠ることなく、この読み物を冒険小説さながらのページターナーに仕上げることに成功している。気の利いた構成とメリハリのある筆運びで、フォーセットの人となりや、彼がその存在を信じ、命を賭けて探しにいった「Z」に対する読み手の興味を巧妙にかきたてていく手腕は驚き以外の何ものでもないが、これがデビュー作だというからさらにびっくり。「Z