教科書通りのシンプルな枠組みでスタートした異次元緩和にはさまざまな付属物が付いて、「大胆な金融緩和」は今では建て増しを重ねた温泉旅館のようになってしまった。 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という正式名称を持つ現行の金融政策の枠組みには、実は「量」の面での明確なコミットメント(約束)がない。三層構造になっている日銀当座預金(各銀行が日銀に開設している口座の預金)は、どこが1階(プラス金利適用残高)で、どこが2階(ゼロ金利適用残高)かわからない状態になってしまっている(これらの点については後述)。このような説明をしたら、戸惑いを覚える人がいるかもしれない。 それぞれの局面で最善と思われる措置を積み重ねた結果、今の枠組みが出来上がったのだと考えれば致し方ない面もあるが、あまりに複雑な枠組みは金融政策の運営の透明性の確保という点でも問題がある。となれば、金融緩和の大枠は維持したうえで、異次