ぼくの「電波男」論はわかりづらいようなので、簡単にまとめておこう。 まず「電波男」がどういう本なのか。ぼくが思うに、それはナルシシズムを薦めた本である。 現実世界では、個人の自己愛は決して十全に満たされることがない。なぜなら、かれの欲望は必ずどこかで壁にぶつかり、ルサンチマンが発生することになるからである。これは現実世界のどうしようもない性質だ。 しかし、虚構の世界は違う。虚構世界では、どんな望みも欲望も叶えることができる。そんな幸福な世界において、架空の美少女に愛されるという形で自己愛を満たすこと、それがすなわち「萌え」である。 現実世界では、恋愛には格差があり、差別があるが、虚構世界にはそんなものはない。そこではすべてが平等なのだ。 だから、この際、不平等な現実世界は捨て去り、虚構世界で存分に自己愛を満たそう! それこそ真の純愛であり、宗教なき時代の「ひとりだけの宗教」だ。「電波男」と