「まあ、がんばれや」 祖父から「声」が消えたのは、昨年のことだった。 地元は小さな島の外れ。そこにある実家の居間で対面するやいなや、力強い目線がこちらを向く。しかし、元気なのは目だけで、ペースメーカーで心臓は動くも、口だけが動かず、衰弱しているよう。その光景にこちらの気持ちが動揺し、声を失った。 Photo by Justin Leonard (CC BY 2.0) セミの声が聴こえる、じわりと汗ばむような夏。それは、東京では国会前など路上で声を上げるような動きが大きく取り上げられる時期だった。ふだんは東京に住んでいるので、実際、そういう行進や声を見聞きした。若者の声がなにかを変えるのかもしれない、人々にそう思われる瞬間もあっただろう。 他方、こちらにあるのは、もうなにも伝えられないのか、口喧嘩もできないのか、というある種の絶望感。いざそうなると、祖父を前にして、失った声を取り戻そうとして
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