1 TPP をめぐる議論の間違い 東京大学 鈴木宣弘 1. TPP はアジア太平洋地域の貿易ルールになるから参加しないと日本が孤立する これは間違いである。米国は、自らは NAFTA(北米自由貿易協定)などで「米州圏」を固めつつ、ア ジアが米国抜きで「アジア圏」を形成することには強い懸念を表明してきた。米国が以前から提唱し ている APEC21 ヵ国全体での自由貿易圏 FTAAP は、その実現をめざすというよりも、ASEAN+3(日中 韓)などのアジアにおける連携の試みを攪乱することが主たる目的と考えた方がわかりやすい。 TPP の推進も、FTAAP の一里塚というよりも、ASEAN+3 などのアジア圏形成を遅らせるのに好都 合なのである。米国自身、「これは対中国包囲網だ。日本は中国が怖いのだから、入った方がいい」と 説明している。中国も韓国もインドネシアもタイも NO といっている T