男は、そう言い放った。場が、どよめいた。それは、とある化学メーカーの採用試験の一環として行われた、グループディカッション中の出来事だった。議論のテーマは、「あるべき教育の姿」。当然のことながら、彼はGDに参加した学生全員からの攻撃を受けることとなった。何しろこれは就職活動なのだ。誰だって、自分をよく見せたい。できれば、ノーリスクで……。 そうした状況の中で、飛び出したのが上記の発言である。突っ込み所は満載。さあどうぞカウンターをブチこんでください!と言わんばかりのテレフォンパンチ。しかも、発言者はどうみても議論に弱そうな、うらなりびょうたん型の青年だ。極論を言うわりには、覇気が感じられない。おそらく、思いつきをそのまま話してしまったのだろう。「こいつはいい踏み台だぜ!」学生たちの声なき声が、会議室に響いたような気がした。ついさきほどまでリスクを恐れて無難な発言ばかりを繰り返していた学生たち