2002年の日韓ワールドカップが開催されたことで、日本には当時の最先端をいくスタジアムが数多く建設された。それでもこの場所は日本のサッカーに携わるすべての人たちにとって特別な場所だった。 東京・千駄ケ谷駅近くにある国立競技場。1958年に建設されたナショナル・スタジアムには、人々の思い出がどれほど詰め込まれているのだろう。新国立競技場建設のために7月から取り壊される現在の「聖地」国立で、5月6日にJリーグ最後の試合が行われた。 Jリーグの試合としては288試合目。ヴァンフォーレ甲府のホームゲームとして行われた浦和レッズ戦は、最後を飾るには内容的にもちょっと寂しい0―0の結果だった。それでも3万6505人の観衆は、何らかの思いを抱いて帰途についたのだろう。 新設されたスタジアムに比べれば、確かに施設面での見劣りはする。ただ、このスタジアムがなければ、現在の日本サッカーの隆盛はなかっただろう。