ミュージックビデオではラッパー=ACEとともにミステリアス&ポップな怪演(?)ぶりを見せていた“地獄タクシー”に象徴される通り、吉澤嘉代子の3rdフルアルバム『屋根裏獣』で最も際立っているのは、楽曲個々の妖艶かつ豊潤な完成度をも飛び越えて聴く者すべての五感を満たしてくる、彼女の「シンガー」「表現者」としての成熟と意志そのものだ。 「魔女修行」に明け暮れた少女時代を経て、奇天烈な物語の主人公を歌と楽曲で演じる「妄想系シンガーソングライター」として今や唯一無二の存在感を放つ吉澤嘉代子。1st『箒星図鑑』(2015年)、2nd『東京絶景』(2016年)、そして『屋根裏獣』へと連なるフルアルバム「初期三部作」の集大成となる今作は、彼女の新たな進化の季節を十分に予感させる1枚だ。その全貌を、彼女と一緒にひもといてみた。 インタビュー=高橋智樹 自分の世界に没頭して、でも今はそれを仕事にしていて、逃げ