──ここ数年、国内で盛り上がっている、「ハスラー・ラップ」と呼ばれるジャパニーズヒップホップのスタイルがある。ドラッグ・ディール体験など犯罪的内容をリリックにするというが、その"詞"と"裏社会"のつながりについて、音楽ライター・磯部涼氏に話を訊いた。 日本の音楽シーンでは、不安定な時代だからか、「大丈夫だよ」とか「頑張れ」と語りかけるコブクロや絢香のような向精神薬/精神安定剤──つまり合法ドラッグ的な曲がヒットしています。一方で、数年前からアンダーグラウンド・ヒップホップのシーンでブームとなっているハスラー・ラップでは、違法ドラッグ売買をはじめとした闇社会を扱ったリリックを耳にすることができます。 この通称となっている「ハスリング」とはドラッグ・ディール(麻薬取引)を指すスラングですが、正確には商売のこと。なるほど裏稼業ではあるけれど、あくまで商売についてラップし、別に犯罪を推奨してはいま