「やばい、バグった」 奇妙な存在感を醸しだす蔵書が並ぶ本棚に囲まれた机で、肩まであるような長髪の少年が呆然と呟く。 彼の名前は影沼次郎。外見的には、現代風の鬼太郎といったところか。 魔法を教える特殊学校、私立聖凪高校に通い始めたばかりの一年生である。 彼は聖凪の図書室で頭を抱えていた。 紋様が消えたMP(マジックプレート)を前にして。 ◆◇◆ がんばれ影沼くん! 0.やっちゃった ◆◇◆ 影沼の実家は、呪い師というか所謂『視える人』の家系であった。 親族の中には、そういう職業の人間が何人もいる。拝み屋であったり、何処かの神主であったり、魔法関連の職業だったり。 そして彼の家は、聖凪高校ほどではないが、魔法磁場の溜まり場に建っている。一族の歴史も古く、土地との結びつきも強い。 古式ゆかしい土蔵付き、古井戸付きの、お化けでも出そうな家屋である。 荒れ果ててはいないのだが、何だか妙な陰鬱さがあり