◇『シリコンバレーから将棋を観る--羽生善治と現代』 (中央公論新社・1365円) ◇熱く語られる将棋の「もっとすごい」未来 本書のまえがきには、「『指さない将棋ファン』宣言」といういささか挑発的なタイトルが付けられている。「指さない将棋ファン」とは何か。それはつまり、実際に駒を手にして将棋を指す機会はそれほどなくても、プロ棋士の将棋を観(み)るのが楽しみのひとつだという人たちのことである。 そういうファン層は、以前からも存在していた。彼らが将棋に接するのは、まず新聞の将棋欄と、日曜のNHK教育TVでの将棋番組を通してであった。わたしも幼いころ、ヘタの横好きである祖父が、夕食の後に酒を飲みながら、新聞に載っている棋譜を楽しそうに並べていたのを憶(おぼ)えている。大山とか升田という棋士の名前はそのときに知った。 ところが、この指さないファン層は、最近ではその性格が変わってきた。大きな原因は、