あるレストランでアルバイトをしていた時の話。 夜も更け、間もなく日付が変わりそうな時間帯に中年男性二人が来店した。そこそこフランクな人たちで、席を案内すると彼らは感謝の旨を僕に伝えた。サービス業をする上で一人の人間として扱われたことに、また店内もそこそこ空いていて退屈していたタイミングだったために、僕は彼らに多少の好感を抱いた。彼らは生ビールを注文し、それ以降お酒のペースはかなりゆっくりで、ちょいちょい料理をつまみながら楽しそうに雑談を交わしていた。 いたって普通のお客様。のはずが、多少の違和感を覚えた。話し方、というか、距離感の詰め方、に対してである。 「新人さん?」一方の男性に急に呼び止められた。「いえ、もう一年ほど勤めています」と伝えると、急に手を触られた。びっくりした目で彼を見ると「あなたゲイでしょ」と言われた。「いえ、違います」と思わず笑いながら僕は言う。彼は「うそー、絶対そっち