老いる、という言葉を聞いた時、あなたはどんな印象を受けるだろうか? 例えば、こう説明する人がいる。 人間は生まれてから20歳くらいまでは、どんどん成長していきます。その後二十年くらい停滞する時期がありますが、そこからはかつて成長したのと同じくらいの勢いで衰えていく。 赤ん坊が急に言葉を話したり、立ち上がって歩いたりしますが、老化も同じようなもので、昨日までできたことが急にできなくなる。 それは死ぬまで続くんでしょうし、そうやって死に向かう階段を降りていくことこそ、老いるということなんでしょう。これは2012年。当時還暦を迎えた坂本龍一さんが文藝春秋に寄せた『60歳 還暦の悦楽』という手記に綴られていた一節だ。 かつて「若者たちの神々」とまで呼ばれた坂本さんが、人生について語る様は実に柔らかい。「死に向かう階段」を目の前にした時、後悔や絶望といったマイナスな感情が芽生えるかもしれない。 しか