漫画の最大の武器は「わかりやすさ」 ──絵について、特に気をつけていらっしゃるのはどんなことでしょうか? 弘兼憲史(以下、弘兼) まずは、顔の表情については線を少なめにして描くということを心がけています。だから、大きいアップの絵でも、顔にたくさんの斜線を引いて影を付けるということはあんまりしません。顔に細かく描き込むクセをつけると、小さい顔の表情が描けなくなるでしょう。すると大ゴマばかりの絵になって、広さを感じられなくなります。 広さを感じさせるのは大ゴマではなくて、ひとつのコマの中に小さい人物を入れることなんですね。つまり、アップではなくてロングなんです。シンプルな線で顔を描いていると、ロングのコマに対応しやすいんですよ。 それと、絵とフキダシのバランスについては、リズムを乱さないように、わりと贅沢に絵を前に出すようにしています。つまり、フキダシの数をなるべく抑えるということですね。今の