第62回 あまりに異質であった三代目 『安倍三代』(青木 理 著、朝日新聞出版) ずっと続けてきた阿片を巡る読書だが、現在少々停滞している。問題意識は「昭和初期から敗戦に至るまでに大日本帝国が国際条約に違反して商った阿片の収益は、戦後の日本の政治にどう関係したのか」だが、だいたい出版されている本としては読み尽くしたかな、というところまで来てしまった。 そこで、逆方向から攻めることにした。ここまで、日清戦争による台湾の植民地化から始めて時代を追うようにして読書してきた。では、逆に現在から歴史を遡るようにして読書していったなら、なにか分かるだろうか。 阿片に関係し、戦前と戦後をつなぐキーパーソンは、間違いなく岸信介だ。しかし岸は賢く、老獪であり、容易なことでは尻尾を出さない。ならば、現在から岸へと遡る形で読書すれば、なにかが見えてくるのではないか。 というわけで読んだのが今回取り上げる『安倍三