[Part1] 「攻め」と「守り」に分かれて 数学者は、暗号開発最前線にいる 古代ローマ帝国のシーザーの時代から使われてきた暗号は、近現代に入って、数学の隠れた応用分野になった。外交上の機密文書の送受信、あるいは戦争時の作戦指令の伝達。第2次世界大戦では暗号作成や敵国暗号の解読に著名な数学者がひそかにかりだされた。 日立製作所の渡辺大さん その暗号が今、表舞台に上っている。ネット通販でクレジットカードの番号を伝えるとき、本人確認のIDやパスワードを送るとき、その情報は暗号化されて初めて安全が確保できる。暗号はネット社会に不可欠な技術になった。 1年前の冬、日立製作所の渡辺大は、国際コンペのライバルが次々に姿を消すのを、あっけにとられながらみていた。 「候補Aの弱点、発見」 「候補B、破りました」 専用のメーリングリストには、毎日のようにこんな報告が飛び込んでくる。51候補が、瞬く間に半数足