『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』をはじめとする文庫はいまも広く読み継がれ、ネット社会の出現や臓器移植の問題性などを予見したことでも注目される作家・星新一。本書はその生涯と実像に迫るノンフィクション大作です。 ――これまで『絶対音感』『青いバラ』等のノンフィクション作品で、科学と人間、スポーツ、教育について問いつづけてきましたが、今回はなぜ「星新一」だったのでしょうか? 平成十三年の夏ころでしょうか。クローン羊ドリーの誕生が発表されてから、私は生命科学の動向を取材していたのですが、仕組みや社会的意義のわかりにくいクローン技術や遺伝子操作などの最先端の科学をどうすればわかりやすく伝えられるか悩んでいて、たまたま書店で『ボッコちゃん』の文庫を立ち読みしたんです。人類が子供を産めなくなって滅亡のときを迎える日々を描いた「最後の地球人」というショートショートにぐいぐい引きこまれ、最後のページを読