猪変 [編]中国新聞取材班 昨年秋ごろ。瀬戸内海を泳ぐ猪(いのしし)の映像が全国ニュースで流れた。コミカルな音楽付きで、女性アナウンサーの「微笑(ほほえ)ましい」といわんばかりの口調に、気が遠くなった。 海を泳ぐ猪の姿は、都会の住人には健気(けなげ)でかわいく映る。けれど、瀬戸内の島に住む者にとっては、疫病神上陸警報でもある。昨夏小豆島に移住したばかりの私には、どちらの気持ちもわかる。小豆島では疫病で絶滅したはずの猪が、ここ4、5年で増え始めている。 本書の元となる連載が中国新聞で始まったのは2002年。中国地方はもともと猪の多い地域で、猟も盛んだった。90年代ごろから猪が山から里に下り、田畑を激しく荒らし、とうとう芸予諸島を泳ぎ渡る姿が目撃されたことを受け、企画された。 そもそも何故急に増え始めたのか、生息数や被害額はどう数えているのか、昔と今とで何がどう違うのか、高齢化が進む地方で里山