はらだまは/1962年東京都生まれ。森ビル森美術館設立準備室勤務、フリーのキュレーターなどを経て、2006年『カフーを待ちわびて』で小説家デビュー。著作に『永遠をさがしに』『でーれーガールズ』など。 新潮社 1680円(税込) 美術館に入ると静寂とともに威圧する何かを感じる。芸術の持つオーラだろうか。片隅にはひっそりと作品を守る監視員が佇む。彼らは彫像のように美術品と対峙している。 『楽園のカンヴァス』のヒロイン、早川織絵は倉敷にある大原美術館の監視員である。かつて若手美術研究者としてパリで名を馳せたが、今では地元に戻り母と娘との三人で平穏に暮らしている。彼女に、ある日全国紙の文化事業部が企画するアンリ・ルソー展の協力依頼が飛び込んできた。この展覧会で一番の話題となるだろうニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵の『夢』を借りる条件、それが織絵を日本側の窓口とすることだった。 十七年前、織絵