トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事 【書評】 遊楽としての近世天皇即位式 森田 登代子 著 Tweet mixiチェック 2015年4月26日 ◆浮かれ騒ぎ、見物する民衆 【評者】長山靖生=思想史家 天皇の即位式といえば、昔から、庶民とは縁遠い厳粛な儀式だと思いこんでいた。現代でも皇室は遠い存在なのだから、江戸時代には二重の意味で庶民には無縁だったろう、と。江戸時代は厳しい身分制社会だったし、幕府は朝廷の力を削(そ)ごうとしていたので、天皇と民衆が結びつくような儀式を警戒していたとの説が有力だった。 しかし天皇に関わる行事の中でも、最も重要で最も厳粛だったはずの即位式は、民衆の見物が許された祭典だったという。著者は即位式を記録した図像などから、御所の南庭に押し寄せ、おおらかに即位式見物を楽しむ民衆の姿を掘り起こした。そこには、見物し