薄暗い4畳半の作業場。手にしたはんだごての先から白い煙があがり、ヤニのにおいが立ちこめる。 東京都杉並区の雑居ビルの一室が、音響機器メーカー「マックトン」の自社工場だ。社長の松本健治郎さん(82)は半世紀にわたり、真空管アンプを作り続けている。 「時流に逆行しているのは分かっている。でも、真空管が世の中から消えてしまうまでは、ね」 創業したのは1964年の春。街は半年後に控えた東京五輪に沸き立っていた。テレビが爆発的に普及。大量生産、大量消費の時代だった。 アンプはオーディオの心臓部。レコードやCDに記録された音の信号を増幅し、スピーカーを鳴らす。かつては真空管が主流だったが、その頃から、コストが安く、寿命も長いトランジスタへと切り替わりつつあった。
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