複数のノンフィクション作品との類似表現が問題となっていた、北条裕子さんの「美しい顔」(群像6月号)は芥川賞の受賞を逃した。選考を終えて、委員の島田雅彦さんは「事実には著作権はありませんので、誰もが書く自由はある」とした上で、「事実を吟味し、自分のなかで換骨奪胎してフィクションの中に昇華する努力が足りなかった」と受賞に至らなかった理由を述べた。 島田さんは「美しい顔」について、「場外乱闘というか、盗用疑惑ということでネットでもかなりの議論になっている」と前置き。「いわゆる盗用疑惑ということに関しては、法的な問題には至らないケースだと考えています。それはわりと(選考委員)共通の認識でした」と語った。 ただ、今回の問題は「震災を書く作家なら誰もが意識すること」とも。「震災そのものを扱う小説はなかなか書きにくいだろうという認識が実作者にはある。だから、それぞれに独自の装置を工夫して震災にふれる、震
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