事件ノンフィクションと呼ばれるジャンルの醍醐味が、存分に味わえる一冊だ。この事件の何に対して自分が釈然としない思いを抱いていたのか、その正体が嫌というほど見えてくる。その実像は、事件当時に見知っていた情報とは大きく異なる印象があった。 この記事の写真を見る PC遠隔操作事件とは、2012年6月から9月にかけて14件もの殺害・爆破予告がなされた事件である。JAL便の爆破予告から、小学校の襲撃予告、はたまた有名子役や人気タレントグループ襲撃予告までとターゲットは幅広く、世間を震撼させた。 逮捕されたのは、IT関連会社社員で当時30歳の片山祐輔という一人の青年であった。本書『PC遠隔操作事件』では、事件発生からの全過程を克明に記録し、事件の中からあぶり出された課題を、今あらためて検証しようと試みている。 ■前代未聞の複雑な大事件 本書のスタンスが特徴的なのは、この事件が本当にこれほど騒がれ
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