東京・上野でビザンティン美術、正確にはポスト・ビザンティン美術の貴重な作品が拝観できます。それはイコン画というもので、「聖像画」と訳され、ギリシア正教会で礼拝に用いられるものです。形式としては、本作もそうですが、四角いお盆状に真ん中をくりぬいた板に、金地を施し、鮮やかな色彩と象徴的な表現で描かれることが多いでしょう。「美術」とは言うものの、本来は宗教画で、いわゆるアートとは異なる存在。どう見ていいのか悩んでしまうかもしれません。 本作は、図で示したように複数の画面から成り立ちます。タイトルは右の図の太線の内側、彫り窪められた部分の2つの場面を指し、(2)の横長の部位に「空の御座」という最後の審判の際にキリストが座る玉座、(1)の一番大きな区画に「キリストの昇天」の場面が描かれています。区切り方が不規則に見えますが、光背に囲まれたキリストが画面全体の中央に来るように考えられたのでしょう。厳格