イーロン・マスクという人物の報酬構造とその桁外れの金額は、現代資本主義の歪な構造を象徴する事例として、極めて重要な研究対象である。2020年時点で彼が手にした報酬は約66億ドル、日本円換算でおよそ7300億円という途方もない数字であり、その背景にはストックオプションやRS(Restricted Stock:譲渡制限付き株式)といった、いわゆる「株式によるインセンティブ報酬」の存在がある。これらは単なる給与ではなく、企業の株価を上昇させることに成功した経営者に対して支払われる報酬体系であり、一般的な労働者の賃金体系とは根本的に異なる「資本による報酬」である。2024年には8兆円という金額が報酬として承認され、さらに2025年には9兆円を超える可能性が示唆されている。この金額は、単純計算で日本の国家予算の数分の一に相当する規模であり、米国の上場企業の経営者報酬としては史上最高額であるという点が
