父が養子に出されることは産まれる前から決まっていたそうだ。詳しいことは知らないが、産まれたらすぐに育ての親(私の祖父母)に引き渡され、名前も祖父母が付ける手筈だったらしい。 ところが、産みの親が手放しがたく思ったのか、何か他に事情があったのか。父の引き渡しは当初の予定よりずれ込み、命名も産みの親がすることになった。 祖父母はそれが心残りだったのかもしれない。 初孫である私が産まれたとき、祖父母は私の命名権を欲しがった。祖父母が候補として挙げた名前は、私の両親の意向とはずいぶん離れたもので、……この話をしてくれた母の口振りから察するに、多かれ少なかれごたごたしたんだろう。みんなで話し合って名付けましょう、とはいかなかったようだ。ままならぬー。 母からこの話を聞いたのは、私がまだ学生の頃だ。名付ける側の気持ちも知らず、名付けられる側の傲慢さで、名付け親なんて誰でもいいのにな、誰にどう呼んでもら