前の文章へ戻る 「古典派からのメッセージ」目次へ戻る 表紙へ戻る 東南アジアの民族と歴史 Ⅰ 現代の日本人は、戦前の人たちよりも東南アジアのことを知らないのではないだろうか。戦前この地域は、日本にとって各種天然資源確保の見地から「戦略地域」であった。現在でも、日本的多国籍企業にとっては、市場として或いは輸出基地として、重要な戦略地域であるが、国としては、また、日本人ひとりひとりにとっては、戦前よりも切実な関心が薄いのではないだろうか。この地域にどんな民族が分布し、彼らがどんな歴史を展開したのか、例えば、タイとカンボジアは民族系統が異なる国であることなど、「一流大学」の出身者でも知っている人は少ないのではないか。 今後、世界は、米国、欧州、日本の三極を中心にしたゆるやかなブロック経済化が進むと思われる。その場合、米国の後背地は中南米であり、欧州の後背地は中近東とアフリカであり、日本の後背地は