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  • 『遁走状態』ブライアン・エヴンソン、柴田元幸訳(新潮社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 →紀伊國屋ウェブストアで購入 「これですべてではない」 かねがねこの欄で取り上げたいと思っていたのが柴田元幸氏の翻訳である。新しいものが出ると、手にとっては「よし、これを」を思ったりしたのだが、何しろウソみたいに仕事が早い人で次々に新しいものが出る。あれこれ目移りしているうちに、ついに柴田氏は大学を辞めてしまった。きっとこれからはさらにスピードアップするに違いない。たいへんだ。 もともと柴田氏はポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、レベッカ・ブラウンといった作家の翻訳で知られ、どことなくこうした作家の作風とそのイメージが重ねられてきたかもしれないが、中には「書き出しで読む『世界文学全集』英米篇」(「文藝」2009年春号)などという企画もあり、そこではフォークナーやメルヴィルはもちろん、ジェーン・オースティンからコンラッド、ディケンズまで、まったく文体

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  • 『太平記』 さいとう・たかを (中公文庫) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →上巻を購入 →中巻を購入 →下巻を購入 「マンガ日の古典」シリーズから出ているさいとう・たかをによる『太平記』である。 漫画だから吉川英治版をもとにしているのかなと思ったが、そうではなかった。オリジナルの『太平記』をかなり忠実に漫画化というか、劇画化しているのである。 怨霊話だらけの第三部を短くするとか、軍勢の数の誇張や史実との違いを注記するとかいったアレンジはほどこしてあるが、ほぼそのままなのだ。 詠嘆調の場面や、クライマックスの場面では原文が書きこんであって、禍々しい字面が迫力をいや増しに増している。意味はわからなくとも絵を見れば一目瞭然だから、古文が不得意な人は擬音の一種と思えばいい。 巻ごとに起承転結があって、ぐいぐい引きこまれる。古典の漫画化としては大和和紀の『あさきゆめみし』と双璧をなすかもしれない。 順に見ていこう。 上巻は後醍醐帝即位から鎌倉幕府滅亡までを描く。後醍醐帝

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  • 『それからのエリス』 六草いちか (講談社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 『舞姫』のエリスのモデル、エリーゼ・ヴィーゲルトをつきとめた『鷗外の恋 舞姫エリスの真実』の続編である。著者がついにエリーゼの写真にまで行き着いたことは新聞の報道などでご存知だろう。書はこの奇跡ともいえる発見の顚末を語っている。 前著のしらみつぶしの調査の後でまだ調べることが残っているのだろうか、周辺的事実の落ち穂拾いで終わってしまうのではないだろうかと危惧して読みはじめたが、はたして370ページのうち最初の270ページは心配したとおりの展開だった。 六草いちか氏は調査を再開するにあたり一つの仮説を立てる。エリスは鷗外の子供を身ごもっており、ドイツに帰ってから産んだのではないか、というのだ。 そう疑う理由はある。まず不幸な結末にもかかわらずエリーゼが鷗外と文通をつづけていたこと。日くんだりまで行ったのに追い返され(帰りの船の件で森家はエリーゼにひどい仕打を

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  • 『虹の少年たち』アンドレア・ヒラタ著、加藤ひろあき・福武慎太郎訳(サンマーク出版) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 校長先生の自転車をくせ毛の細身の少年が懸命にこいでいる。荷台には、小柄な少年が顔を空に向け、目をつむって両手を広げている。右手には、チョークの箱を持っている。こいでいるのが、書のおもな語り部であるイカル、荷台にいるのが俳優志望の漁師の子で、後に有名な多国籍企業のITマネージャーになるが、それでも俳優になる夢をあきらめないシャダン、最後の節の語り部でもある。表紙を飾るこれらの少年たちが、書の主人公「虹の少年たち」10人+のうちの2人である。 「小説の舞台はスハルト大統領による独裁政権が続く一九八〇年代、インドネシアはスマトラ島の南沖にあるブリトゥンという小さな島だ。天然資源に恵まれたこの島で、国営の開発公社は錫を掘削し莫大な利益を挙げていた。しかしその利益が全島民に行き渡ることはなかった。校舎は傾き、教師たちはほぼ無給、制服すらない貧しい学校から物語は始まる

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  • 『コレクションさん』古川日出男+後藤友香(青林工藝舎) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「絶望を集めてまわる、そんな小学生の冒険は?」 小説家・古川日出男が、マンガ家・後藤友香と組んで、初の絵を発表した。生まれたのは、東日大震災以後の日語の表現世界に独自の位置を占めるにちがいない、感動的な傑作だ。 「コレクションさん」に転身するのは、ランドセルをしょった小学生。彼が隣の学区、別の町へと境界を越えたときから、冒険がはじまる。誰もいない町で出会ったのは、じゃあん!じゃあん!ぎゅいいいんと宇宙的な音色でかっこよくエレキギターをかき鳴らすお兄さん。ところが、自分が「せわがかり」をしているサボテンにもその音を聞かせてやろうと少年がランドセルから鉢をとりだすと、サボテンが枯れている。「まるで1年とか10年とかほったらかしにされていたみたいに」。男の子はべそをかく。絶望にかられて。 するとお兄さんがいうのだ。きみはこれから自分の町に引き返して、この世界の

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