慶陽大学付属藤川高校に通う2年生の久寿米木一葵くすめぎ・いつきには、 顔も名前も知らない許嫁がいる。 その存在があるために、一葵はこれまで恋愛に興味を持つことがなかった。 許嫁相手が何者なのかを知らされる17歳の誕生日は、 およそ1ヶ月後に迫っていた。 そんなある日、失恋したクラスメートを慰める会を開くために、 藤川のファミレス「ルサック」を訪れた一葵は、 そこでアルバイトの女子店員とトラブルになってしまう。 その店員――洲宮紗絵すのみや・さえは、同じ高校に通う3年生の先輩だった。 出会い方は最悪だったものの、紗絵の大人びた立ち振る舞いを見て、 一葵はすぐに憧れと尊敬の気持ちを抱くようになる。 幼馴染みの天羽あまはねねは、そんな一葵を見て、紗絵との仲を全力で応援し始める。 季節は秋。穏やかだった一葵の高校生活に、少しずつ変化が訪れようとしていた。