物議を醸しそうな予感はあった。 お披露目となったヴェネチア国際映画祭の記者会見で、記者からの質問に監督のリドリー・スコットは「もう一度、映画を観たまえ!」と怒りの声で反応した。 現在公開中の『最後の決闘裁判』は、日本でも作品のレビュー、その表現に関して大きな反発が起こったりと、映画ファンの間では話題になっている。 すでに公開から1ヶ月近く経っているので、映画の後半も含めて説明すると、14世紀のフランスで性的暴行を受けた人妻が、その事実を告発する物語。これを、(1)被害者の夫である騎士ジャン・ド・カルージュ、(2)彼の友人である宮廷の家臣ジャック・ル・グリ(事件の加害者)、そして(3)被害者である妻マルグリットという視点で3幕にパート分けして描く。黒澤明監督の『羅生門』に倣って、視点を変えることで出来事の真実が見えてくるスタイルだ。ベースは史実である。 ヴェネチアの記者の質問は、「第2幕と第