奇蹟なんてそう滅多に起きるものじゃないなんてことは僕にだってわかっている。たとえば大事故のニュース。生存者の見込み無し。「無し」。わかってる。そんなことは。でもさ、そんなとき、一人でも、一人でいいから救われて欲しいと思う。暗いニュースを見るたび、そんな奇蹟が起きるのを僕は信じてやまない。 昼、天津丼を食べていた。卵にとじられた蟹の欠片を箸で持ち上げ、口に運ぶ。味の染みたご飯をかきこむ。そんな食事の最中に、ふと、蟹を飼おうと思った。川原にいる地味な奴や、アメリカからやってきた海老っぽい面をした奴じゃなくて、ズワイかタラバ。個人で飼育できる生き物なのかどうかは知らないけれど。そして卵から孵った子ガニ達を海へ放つんだ。 挨拶に毛が生えたようなメールを送ることなく消している。送り先のアドレスと電話番号を自棄になって消してしまったせいで送れないのだ。お酒が入るとそんなことを忘れてしまう。いざ送信しよ