2013.09.20 小宮良之●文 text by Komiya Yoshuyuki photo by Fujita Masato アンチドロップアウト 第3章 vol.7 part2 徳島県鳴門市。4歳の頃の記憶が、匂いとともにやけに強く残っている。母がヘアスプレーを吹きかけ、いそいそと出かけていった。朝晩と働きづめの母は、夜は宴会場のコンパニオンとして働いていた。 生まれたのは山口県宇部市だった。しかし1歳の時、父が莫大な借金を残して他界。父の親戚はそれにはまったくの無関心、というよりも無視を決め込んだことで、母がすべてを肩代わりした。5千万円近い借金を、娘と息子のいる母が返せるめどは立たなかったが、母は面子にかけて自己破産という選択をしなかった。 しかし現実は甘くない。 結局は”サイクル返済”する羽目になった。返すお金がなく、どこかからお金を借りては利子だけを返す、そしてまた別のと