「リズム感」と「敗戦」 「日本人には先天的にリズム感が欠如しているので、ロックは演奏できない」 成毛滋(なるもしげる)というギタリストが、雑誌でそう主張しているのを読んだのが1972年の秋のことだった。 『ニューミュージック・マガジン』という雑誌である。 読んだ私は中学3年だった。 強く衝撃を受けた。 いわば西洋が主流の文化に対して、日本人はどんなことがあっても追いつけることはない、という主張である。 1970年ごろ、よく耳にした論説のひとつだ。 西洋と東洋は(ないしは西洋人と日本人は)根本的に違っているので、日本人がこのままどれだけ努力しても、永遠に西洋文化に追いつけない、という言説である。この当時、繰り返し主張されていた。 『日本人とユダヤ人』という本が売れたのがその2年前のことであった。 この論説は、あまり解決策や、未来展望は示されず、ただ、彼我の違いについて悲観的に述べるばかり、と