菊地成孔の『フロリダ・プロジェクト』評:夢の国の外縁はゲトーが取り囲んでいる。これは驚くべき真実なんかじゃない。原理である。 中心と周縁 山口昌男を引っ張りださなくとも、周縁は中心に対し、圧倒的な差異を抱きながら、両極の片方を担うようになっている事を我々は知っている。皇居の周りはランウエアに身を包んだランナーが取り囲んでぐるぐる回っている(皇室の人々との圧倒的な差異!)、プエルトリコの首都サンファンは山の上にあり、上に向かえば向かうほど途方もない金持ちが住んでいる。サンファンの周囲はヴァージン海峡である。サンファンでトラブルがあったら即射殺、山から裏の海にポイ捨てされれば、サメがガブガブっとやって証拠はわずかな肉片以外残らない。彼女という中心の周縁には僕らがいて、圧倒的な差異を抱きながら、両極の片側を担っている。ガザ地区は、その逆転的な極例であろう。 と、こんな漫画のような面白さを列記せず