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ブックマーク / www.aozora.gr.jp (2)

  • 三好十郎 胎内

    暗い。 右手の奥のほうに一ヵ所かすかに明るいところがある。 遠くでかみなりが鳴っている。雨もふっているらしい。それらの音が、ここにこもって、低い反響をおこしている。 ………………… ながいことたってから、かすかに明るいへんの、さらに奥のあたりで人のケハイと足音。それから、にぶいドシンという音がする。その方から、とぎれとぎれの人声。

    amagitakayosi
    amagitakayosi 2016/06/09
    “男の声 ふ! 人間が一番ケダモノくさい。 ”
  • 中島敦 山月記

    隴西(ろうさい)の李徴(りちょう)は博学才穎(さいえい)、天宝の末年、若くして名を虎榜(こぼう)に連ね、ついで江南尉(こうなんい)に補せられたが、性、狷介(けんかい)、自(みずか)ら恃(たの)むところ頗(すこぶ)る厚く、賤吏(せんり)に甘んずるを潔(いさぎよ)しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山(こざん)、略(かくりゃく)に帰臥(きが)し、人と交(まじわり)を絶って、ひたすら詩作に耽(ふけ)った。下吏となって長く膝(ひざ)を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺(のこ)そうとしたのである。しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐(お)うて苦しくなる。李徴は漸(ようや)く焦躁(しょうそう)に駆られて来た。この頃(ころ)からその容貌(ようぼう)も峭刻(しょうこく)となり、肉落ち骨秀(ひい)で、眼光のみ徒(いたず)らに炯々(けいけい)として、曾(かつ)て進士に登

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