(「ベニスに死す」1971年/ルキノ・ヴィスコンティ監督/130分) 仄暗い夜明け前の海を蒸気船は黒い煙を吐きながら静かに進んでいきます。 マーラーの交響曲第5番第4楽章Adagiettoが厳かに流れる1911年のベニスです。 映画の代名詞のようになったこの名曲は、映画の冒頭と最後にまた主人公アッシェンバッハの心の揺れや追憶の場面で流れます。 アッシェンバッハは著名な作曲家指揮者ですが、仕事に行き詰まり健康もすぐれないため休暇を取り一人この水の都にやって来たのです。 身も心も疲弊した彼の表情はバカンスなどとは程遠い物憂さで、蒸気船の中で見た化粧をした男に嫌悪感を覚えるわ乗り換えたゴンドラでは船頭に腹を立てるわさんざんでして、避暑地リドのホテルにやっとたどり着きます。 不機嫌なまま部屋に入り窓を開けるとサッと目の前にビーチが一望!金持ちが集まる超高級ホテルなんです。 晩餐時ともなればサロンに