* 自己啓発の功罪 「自己啓発」なる言葉は当初、高度経済成長期下の労務管理の文脈において用いられていましたが、1980年代以降はニューエイジと呼ばれる精神世界と結びつき、やがて1990年代になるとオウム真理教をめぐる報道の中でそのイメージを悪化させることになりました。もっともその一方で「本当の自分探し」という人々の「自己発見」の欲望それ自体は収まるどころかむしろ拡大を続け、1990年代以降はより穏当な形で「自己啓発」を推進する言説が社会の様々な領域に広がっていきました。 この点、1990年代とは「心」がこれまでになく注目された時代でした。後に「心理学化」や「心理主義化」という言葉で呼ばれたように、この時期においては様々な社会問題が個人の「心」の問題に還元される傾向が強まり、またその「心」を扱う専門分野としての心理学が人気を集めました。 こうして1990年代中盤以降、このような傾向は「自己発