私は良い妻ではなかった。良いパートナーでもなかった。 家事はできないし、お金も稼げないろくでもない存在だった。 結婚生活は思っていたより大変で、我慢も多かった。私は感情的で飽き性だし、これが最初で最後の結婚生活になるとは自分でも思っていなかったけれど、まさか夫が本当は女に生まれたかったという理由で結婚生活が終わるとは思ってもいなかった。 私はこの出来事が起こる前からトランスジェンダリズムには懐疑的だった。 いくら性器を切り落とそうが、ホルモン治療をしようが、性別は変えられない。それが元からの自分の思想であり、事実だと信じている。けれど、正直自分とは関係ない思想だし、その人が生きたいようにすればいいと思っていた。私が日本を離れてから数年経つと、元男子や元女子などの言葉が出現し始め、「性自認」に寛容になろうという動きが日本国内でも高まり始めたと思う。そのころ私はイギリスの田舎に住んでいたことも