父親の家(実家)へ単身赴任するために、 二階の改造を始めている。 母が亡くなってから やはり、父親は気力が萎えてきている。 あれほど、頑固一徹で、 あれほど母と激しい夫婦喧嘩をしていた 面影がだいぶ薄くなって、 柔和な顔立ちになっている。 母が亡くなるまで 俺は家族というものについて これほど多く(深くではない)考えたことはなかった。 否が応でも、 赤の他人だった人間が何十年も同居して、 子どもを産んで、 ひとつの家族を形成する。 子どもの方は、それが自然であると感じ (そりゃそうだ。 赤の他人がくっつかなければ自分はこの世に 存在していないわけである) それが、未来永劫なんとなく 続いていくのではないかと感じている。 ところが、そのなんとなく堅牢だと思っていた 紐帯が、メンバーの中心人物の死によって 急によわよわしい こわれものに変じてしまう。 そして、そうであるがゆえに、 またそれがい