「バカドリル」や、「オッス!トン子ちゃん」でお馴染みのタナカカツキのデビュー作が実は叙情派漫画だったということをご存知でしょうか。バカドリル以降、DVD作品や、イラストレーション的仕事が多かったため意外に思う方も多いとは思います。ガロの流れを汲みつつも、それらとも一線を画すどこかライトでアンビエント感覚すら漂うアンチクライマックスな初期のマンガ作品は、連載されていたバブルまっただ中の当時には異色作として読者の目に映ったことでしょう。高野文子の『るきさん』がバブル時代に、現在に通じるような質素で些細な日常に着目し、しかも読者の消費欲をくすぐる情報誌「Hanako」で連載されていたことに強い意志を感じるように、この作品も「コミックモーニング」の中で時代とは断絶したような静けさとともに連載されていたと思うと今回の復刻で読むのもなかなか感慨深いものがあります。舞台は京都。鞍馬山や家の屋根から眺める