フランスのTGV、ドイツのICEと高速鉄道は数あれど、日本の新幹線の正確さは世界に類を見ない。速さではTGV(時速320キロ)に抜かれたが、1964年、世界に先駆けて開業して以来長らく、新幹線は世界最速の鉄道だった。そもそもダイヤがほとんど乱れず、定刻どおりに運行している国は日本だけ。このシステムこそ、鉄道大国と言われるゆえんだろう。 新幹線が優れているのはテクノロジーだけではない。『新幹線を運転する』(メディアファクトリー)は、ノンフィクション作家・早田森氏が一人の現役新幹線運転士に取材し、運転士業務の知られざる実情に迫った新書だ。驚異の運転技術や緻密に決められた仕事の流れ、運転室からの風景など、普段、われわれが見ることのできない舞台裏が子細に描かれており、鉄道ファンならずとも興味深い一冊だ。ちょうど、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』のようなドキュメンタリー番組を見ている感じだと