遠くから赤色が見えて,あれって椿だったかなと思い近寄ると,それはサンザシだった。 今日の茶菓子は椿の上生菓子にしようと思っていて,生の椿を探しに,私は大学へ芝刈りに。そうでなくてもいつも,スティックタイプのハサミを持ち歩いているのはそのためだ。しかしハサミは必要がなかった。木の根元には,枝ごと折れたサンザシが落ちていた。 サンザシを拾い,椿はまあいいかと来た道とは別の道を歩くと,目に入ったのは白い椿である。茶花として使うのは蕾の状態の椿だけで,こんなにも開ききった,むしろ朽ちかけている椿など誰も見向きはしない。茶室の中だけでなく大学内でも,白から黄土色へと変わりつつある椿は,見向きなどされていなかった。 頭の中の吉田兼好が「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」と話しかけてくる。そうですよね。「茶花として使えるかどうか」なんて,人間の勝手だ。蕾を愛でるのも,枯れた花を愛でるのも,どっち