ある研究が「役に立つ」かどうかが無闇に取り沙汰され、大学人からそれに対する不満が噴出するようになって久しい。 しかしそういう考えを科学者・研究者に求める傾向が強まったのはいつからなのか。 たとえばアリストテレスやニュートンが「役に立つ」かどうかを第一に考えて研究や思索をしていたとは思えない。また、短期でわかりやすい「役に立つ」をあまりに優先するとむしろ中長期的に重要な発見やイノベーションをとりこぼす、とも言われる。 ではこの「役に立つ」かどうかを第一に求める考え・動向のどこが難があり、どう付き合っていけばいいのか。 初田哲男、大隅良典、柴藤亮介との共著『「役に立たない」研究の未来』(柏書房)の著者のひとりであり、「有用な科学」をめぐる歴史を研究してきた隠岐さや香・名古屋大学大学院経済学研究科教授に訊いた。 「役に立つ」研究をめぐる論点整理 ――産業界などからの「役に立たない研究や学問は不要