2014年10月1日、午前10時。私は西日本新聞の福岡県警担当キャップとして、北九州市の小倉北署8階の大会議室にいた。当時の県警本部長、樋口真人氏(63)が、特定危険指定暴力団工藤会壊滅作戦の第2弾を発表する記者会見が始まっていた。看護師を刺傷した組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)容疑で、トップで総裁の野村悟容疑者、ナンバー2で会長の田上不美夫容疑者ら中枢幹部を逮捕したと報告した後、工藤会の構成員・準構成員に向けて、組織からの離脱を促すくだりに入った。樋口氏は、こう語り掛けた。当時の映像=テレビ西日本提供=をご覧いただきたい。 「田中組を中心とする工藤会。このような組織にいつまでもすがり、一部の幹部に翻弄ほんろうされ、自分の人生、そして家族の人生を棒に振ることはありません。工藤会の構成員、準構成員も一人の人間として、今、大きな岐路に立っているはずです。雲間から一筋の光を見いだし、勇気を出